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達成度の確認で終わるふりかえり
週の終わりにふりかえりをする人は多い。ところが、その中身を見ると、「今週の目標に対して何割できたか」を確かめる作業になっていることが多い。
計画から逆算して進める進め方なら、それで足りる。ゴールが先に決まっていて、遅れを測ればよいからだ。しかし、新しい事業や副業、転職準備のように、ゴールそのものが動く取り組みでは、達成度だけを見ても次の一手が出てこない。「3割しか進まなかった」と分かっても、なぜ進まなかったのか、進まなかった週に何が手に入ったのかは、数字の外にある。
エフェクチュエーションは、起業家の意思決定を研究したサラスバシーが提唱した理論で、計画から逆算するのではなく、いま手元にあるものから出発して行動を重ねる。この考え方をふりかえりに持ち込むと、見る対象が変わる。測るのは「どれだけ進んだか」ではなく、「手元に何が増え、何を賭け、誰と約束が生まれ、何が想定外で、どこまで自分で舵を握れたか」だ。
5つの原則の全体像はエフェクチュエーションのサイクルにまとめてある。この記事では、その5原則を、金曜の30分で回せる5つの問いに変える。
5つの問い
問い1:増えた手段は何か
エフェクチュエーションでは、手段を「自分は誰か」「何を知っているか」「誰を知っているか」の3つに分けて棚卸しする。これが手中の鳥の原則だ(詳しくは手中の鳥の原則)。
ふりかえりでは、この3つについて今週で変わったものだけを書く。
- 誰か(自分の肩書き・できること)が増えたか
- 知っていること(新しく分かった事実、試して分かったこと)が増えたか
- 知っている人(新しく会った人、距離が縮んだ人)が増えたか
何も増えていない週は、「何も増えなかった」とそのまま書く。成果が出なかった週でも、会話した相手が1人増えていれば、手段は増えている。
問い2:賭けた量は許容範囲か
期待される利益ではなく、失ってもよい範囲から行動を決めるのが許容可能な損失の原則だ(許容可能な損失の原則)。
ふりかえりでは、今週賭けたものを時間・お金・信用の3つで書き出す。
| 賭けたもの | 量 | 失っても続けられたか |
|---|---|---|
| 時間 | 平日夜に合計4時間 | はい |
| お金 | 参加費5,000円 | はい |
| 信用 | 知人に試作を見せた | はい(反応は薄かった) |
「失っても続けられたか」の列が「いいえ」になったら、来週は賭ける量を減らす。逆に、3列とも余裕があれば、賭ける量を少し増やしてよい。
問い3:誰と何を約束したか
クレイジーキルトの原則は、事前の競合分析ではなく、自発的に関わってくれる人との約束から事業の形を決める考え方だ(クレイジーキルトの原則)。
ふりかえりでは、今週交わした約束を書く。大きな契約である必要はない。
- 「来月、試作を見てもらう」と言ってくれた人がいる
- 「その件なら知り合いを紹介する」と言われた
- 自分から「この部分を手伝ってほしい」と頼んで、引き受けてもらえた
書けることが何もなければ、今週は誰とも約束が生まれていない。来週は誰かに頼みごとを1つ、自分から出してみる。
問い4:想定外をどう使えたか
予定どおりに進まなかった出来事を、失敗として処理せず、次の手がかりとして使うのがレモネードの原則だ(レモネードの原則)。
今週の想定外を1つ選び、次の3行で書く。
- 何が起きたか
- 当初の予定では、それをどう扱うつもりだったか
- 今回はそれを、どう使えるか
たとえば、「参加するはずだったイベントが中止になった」なら、「その時間を、手持ちの顧客候補3人に直接話を聞く時間に使えるか」と考えられる。想定外を使い道に変えられなかったときも、その事実を書いておけば足りる。
問い5:舵は自分の手にあったか
飛行機のパイロットの原則は、未来を予測するのではなく、自分の行動で未来をつくれる範囲に集中する考え方だ(飛行機のパイロットの原則)。
ふりかえりでは、今週のできごとを2つに分ける。
- 自分の行動で変えられたこと
- 自分の力では動かせなかったこと(相手の返事待ち、市場の動きなど)
後者に時間を注ぎすぎると、動かせない相手の返事を待つだけで一週間が終わる。分けて書くだけで、来週の力の向け先が見えてくる。
記録のしかた:1ページ、30分
5つの問いは、1ページに収める。書式は次のくらいで足りる。
【今週の日付】
1. 増えた手段:
2. 賭けた量と余裕:
3. 生まれた約束:
4. 想定外とその使い道:
5. 動かせたこと/動かせなかったこと:
【来週の最初の一歩】(1つだけ)
最後の「来週の最初の一歩」は、手持ちの手段でいますぐ着手できることを1つだけ書く。複数書くと、計画に引き戻される。
時間配分の目安は、5つの問いで各4分、まとめに10分。合計で30分に収まる。金曜の夕方でも、日曜の夜でもよいが、毎週同じ曜日・同じ時刻に置くと続く。
続けるための3つの工夫
工夫1:書けない問いは飛ばしてよい。 毎週5つ全部が埋まるとは限らない。埋まらなかった問いは、その週に「やっていなかったこと」を教えてくれる。クレイジーキルトの欄がずっと空なら、1人で進めすぎているという合図だ。
工夫2:4週間ごとに、記録を横に並べて読む。 1週間分だと小さな変化にしか見えないが、4週間分を並べると、手段が増えている分野、約束が集まっている相手、想定外が続けて起きている領域が見えてくる。
工夫3:誰かと見せ合う。 同じことをやっている仲間と、月に1回、記録を見せ合う。他の人の記録から、自分の棚卸しにない手段が見つかることもある。
計画的なふりかえりと、どう使い分けるか
ゴールと期限が決まっている仕事には、KPTやOKRの振り返りのような計画型のほうが向いている。エフェクチュエーション型は、ゴールが動く取り組みで使う追加の道具だ。
使い分けの目安は次のとおり。
| 場面 | 向いているふりかえり |
|---|---|
| 目標と期限が固定されている業務 | 計画型(達成度・遅れの確認) |
| ゴール自体が探索中の事業・副業・転職準備 | エフェクチュエーション型(手段・約束・想定外) |
| 組織の中の新規事業 | 両方(上司向けには計画型、自分用にはエフェクチュエーション型) |
因果論とエフェクチュエーションの関係を押さえておくと、どちらの型を選ぶか迷いにくくなる。
やってみよう:今週のぶんを30分で書く
まだふりかえりの習慣がなくても、今週のぶんなら今日書ける。
ステップ1(5分): 上の1ページの書式を、メモアプリに写す。
ステップ2(20分): 5つの問いに、順に答える。埋まらない問いは空欄のまま残す。
ステップ3(5分): 「来週の最初の一歩」を1つだけ書き、カレンダーの具体的な日時に入れる。
来週の同じ時刻に、もう一度同じ書式を開く。それだけで、毎週のふりかえりが、計画の遅れを数える時間から、手元に増えたものを数える時間へと変わる。
関連コンテンツ
- エフェクチュエーションのサイクル — 5原則が回る全体像
- 手中の鳥の原則 — 手段の棚卸しの方法
- 許容可能な損失の原則 — 賭ける量の決め方
- 日常の優柔不断とエフェクチュエーション — 決められないときの判断の道具
参考書籍
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